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「働き方」というよりも、もっと絞って「労働時間」の見える化のお話しです。
6月2日の日本経済新聞朝刊からご紹介します。
みずほ、働き方「見える化」
裁量労働制やめ慣行見直し やりがいと生産性両立
ここから
みずほフィナンシャルグループは働き方改革の一環で、10月から企画の職場で裁量労働制を廃止する。あらかじめ労使で決めた労働時間を働いたとみなす労働の自由度を高める働き方だったが、一人ひとりの労働時間が見えにくく、過重労働を招く懸念が指摘されていた。実態を検証して働きがいを感じてもらう環境づくりを進めるため、仕切り直しが必要と判断した。
***途中省略***
裁量労働は実質的に際限なく残業ができてしまう。業務量に見合った残業代が支払われていないと不満を抱く社員もいる。長時間労働の温床になっている可能性もある。
新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークが増えたことで社員の労働時間も把握しにくくなった。
みずほは社員に働きがいを感じてもらいやすいよう制度の見直しを進めている。今回の裁量労働の廃止もその一環で、いびつな労働慣行をゼロベースで見直す狙いもある。今回の廃止は働き過ぎていた社員の一時的な賃上げにつながる可能性があるものの、誰がどのくらい働いているか「見える化」できると考えた。
***途中省略***
日本総研の山田久主席研究員は「メリハリをつけて仕事をする社員が尊重されるような風土があれば上手く機能するが、現場の管理者の意識が低かったりすると労働環境の悪化につながる。職場の文化や運用のしかたにより大きく実態に差が出る制度だ」という。
ここまで
裁量労働制には、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制の2種類があります。
かつては、社会保険労務士でもこの制度は資格試験の問題でしか見たことがなく、実際に運用したことがない方が多かったようです。
いまでは、この制度を使っている会社は多いです。
私は人事部門で働いていた際、裁量労働制を運用した経験があり、臨検も受けたことがあります。
この制度を導入した際の効果は、何時間働いても「〇時間働いたものとみなす」ということです。
実際1日12時間~13時間働いても、「8時間働いたものとみなす」とすることができます。
この制度を導入するためには、各制度で手続きが異なります。
最後の日本総研の主席研究員のコメントが的を射ています。
「社員を尊重して働き方を任せる風土」が会社にあれば、裁量労働制は機能的な制度です。
「現場の管理者の意識が低い」、つまり単なる残業代減らしとして活用する会社では「労働環境の悪化につながり」かねません。
実際、裁量労働制で働いている人が過労死したという記事をよく目にします。
会社としては、残業代減らしというところに、この制度の旨味を求めていることが多いのかもしれません。
2019年4月から、労働安全衛生法で「勤務状況の把握」が会社に義務付けられました。
労働基準法では、もともと「労働時間の把握」義務が会社にはあります。
「労働時間」と「勤務状況」って何が違うのと聞かれると少し答えに窮するのですが、前者は本当に働いている時間、後者は会社に在社している時間と私は考えています。
ほぼニアリーイコールでしょう。
「労働時間」は、管理監督者や上記の裁量労働制対象社員については把握する義務が会社にはありません。
「勤務状況」は、それらの人に対しても把握する義務が会社にあります。
労働安全衛生法の改正により、専門業務型裁量労働制や企画業務型裁量労働制対象社員だからといって、「労働時間」の把握をしていなかった会社でも、いまは「勤務状況」を把握する義務があります。
もっと言えば、管理監督者も対象です。
何時間働いても「〇時間働いたものとみなす」としているところ、実際に働いている時間数と「〇時間働いたとみなす」時間数に大きな差が出てくることがあります。
企業によっては、高い頻度である場合があります。
「勤務状況」を会社が把握することで、この差が詳らかになります。
あらためて会社が「勤務状況」を把握していなくても、裁量労働制対象社員は、「平均して10時間ぐらい働いているのに、なんで8時間分しか給料をもらえないんだよ」という不満があると思います。
この裁量労働制は、①健康管理の問題(長時間労働に繋がりやすいこと)と、②適切な賃金が支払われづらい(何時間働いても、〇時間働いたこととみなされるため)特徴があります。
働く側からすると、あまり評判が良くない制度であるように思います。
この制度を導入したがるのは会社側で、労働者側から導入してくださいというのは私は聞いたことがありません。
記事の会社は、このあたりの実態も含めて裁量労働制を取りやめるのではないかと私は思っています。
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